CFO視点での経営戦略と財務戦略
経営戦略と財務戦略と聞いて、明確にその違いを認識できるでしょうか?
企業価値向上に向けて経営戦略を遂行するにあたり、財務機能の構築と最適資本構成の実現のために行う財務基盤の強化、改善に対する取組という位置づけです。つまり、主従の関係があります。経営戦略が主であり、財務戦略が従となります。
CFOは、その財務戦略を策定し、遂行する責任者だということです。
では、企業の買収・合併(M&A)の局面で考えてみましょう。
企業は、売上を増大させるために、地理的に営業力が弱い地域に参入するために、その地域で強い営業力を持つ企業を買収するということもあるでしょう。
また、自社の販売製品に近い、高級品や廉価版の製品ラインアップを増やすために、買収することもあるでしょう。
そして、ある業種、製品が成熟化しており、間接費削減を目的に規模を追求する同業と合併することもあるかもしれません。
ここで述べた基本的な3つのパターンは、すべて経営戦略です。
事業遂行上、必要な打ち手として、M&Aを検討しているという状況でしょう。
では、財務戦略としては、どのようなことを考える必要があるでしょうか?
嫌な印象を与えるかもしれませんが、その買収、合併する企業をいかに適切な価格で買うか、自社に有利な支払方法で買うか、が問題といえます。
実際に行われているM&Aでは、相手企業を取り込むこと自体が目的化してしまい、企業価値向上の打ち手としてのM&Aが、贅沢な高い買い物になっていると思われるような案件も見受けられます。
課題として現れるのは、償却に困るほど、のれんが多額になる。また、合併のシナジー効果がなかなか出ないが、買収価格に資金をつぎ込んだために、追加投資が難しく、当初の買収目的が達成できないなどがあげられる。
CFOとしては、経営戦略として正しい案件や取組であっても、財務戦略として適切でなければ、毅然としてその指摘を行う。そのためには、常に、自社の状況を経営戦略に沿って認識し、検討し、社内に、時には社外にも発信することが求められている。