BSとPLの所有者は違う?
以前、私がある米系企業の日本法人でCFOをしていた時の話です。
日本の業績と今後の見込みを話していた時に、アジアパシフィックのCFOが言った言葉です。
その時は、なんとなく、業務的な役割分担であって、「こういう表現をこの人はするんだ」程度の認識でした。
ところが、その後大手のコンサルティング会社や、大手会計事務所のアーンストアンドヤングで、クライアント支援をしながら思い出すと、結構奥が深いなあと感じている言葉でもあります。
それは、「PLはおまえのものだけど、BSは俺のものだ」というものです。
会計を勉強すると、BSとPLは利益でつながっており、不可分なものだと思われるでしょう。
私もこの発言を聞いた当初は、上述のとおり、特段重くは受け止めていませんでした。
これを上場企業に置き換えて考えてみましょう。
上場企業では、よく所有と経営(執行)の分離が議論されます。
これは絶対正解はなく、各企業ごとのベストバランスを模索、追求する必要があるものの、オーナー企業を除いて、所有と経営が全く同一のものだと考える方は少ないでしょう。
所有(株主)の観点からは、短期的利益も重要ではあるが、長期的に企業価値が増大することを、より大きく求めるでしょう。BSの剰余金の拡大や財務バランスという観点も重要になります。
一方、株主から委託を受けて、経営を執行する立場にある執行側(経営者)は、V字回復が高い確率で想定される場合を除いて、単年度業績で赤字や低収益を繰り返していると、自分の首が危うくなります。当然、単年度業績を示すPL、もしくは単年度キャッシュフローに重点を置くでしょう。四半期かもしれません。
経営戦略から実行施策に落とし込んで取り組む日々の事業活動の積み上げとしての単年度業績のモニタリングも重要ですが、財務会計視点からだけではなく、経営視点からのBS管理のウエイトを増やすことも必要ではないかと考えます。
BSとPLのオーナーは誰かと、普段にはない視点で考えることで、業績モニタリングのあり方やガバナンスの効かせ方など、新たな視点で考えるきっかけになるのではないでしょうか?