借入金の極大化?
アメリカの財務部門や経営幹部に読まれている雑誌で「CFO Magazine」というのがありました。今は、Webでも読めるようですが。
1995年だったか、当時私が勤務していたNY証券取引所に上場している会社のCFOが、その雑誌の表紙に写っていました。
彼の記事が、特集されていたのです。
テーマは、「Maximize Debt!」借入金を極大化しろ!です。
自動車のGMをはじめ大企業の多くが、不況の影響もあり財務リストラを強力に推進し、総資産を圧縮するために余剰資産を売却して、借入金を削減し、金利負担を軽くしようとしていた、まさにそういう真っ最中です。
マスコミ的には受けたのでしょう。大々的に特集されました。
しかし、それを見た時の私は、「また、いつものことを言ってるな」という感じでした。アメリカ出張の際には、邦銀のNYの担当から何度かこの話題を出されました。
売上高は、そう大きくはないものの、ずっと増収増益、株価も何度も分割しながらも、ずっと右肩あがりの経営ができていました。M&Aも何度も行いましたが、直後からシナジー効果を出していました。ま、中で働いていた者からすると、即座にシナジー効果を出さされたというのが正しいかもしれません。
話を借入金極大化に戻します。
このCFOが言っていたのはこのような趣旨です。
1.市場、金融機関が資金を提供できる、したいと思ってくれること自体は、なんら悪いことではなく、歓迎すべきことである。
2.企業価値を計算するうえで、資本よりも有利子負債で調達をしたほうが、WACC(加重平均資本コスト)が低下するため、好ましい。
3.金利負担をカバーする利益をだせばいい。
4.バランスシートの右側から調達した資金が、右側の資産を通じて新たなキャッシュを産んでいればいい。
こんなのは、理想であって、現実的ではないと読者のみなさんは思われるかもしれません。
しかし、このポリシーで愚直なまでに、P/Lだけではなく、B/S、C/Fも管理できていればこのような進め方もできます。
私はこの会社の日本と韓国のCFOを経験しましたが、なんでガラス張りのような感覚でした。逆に隠すことができないし、そもそもないので、非常にOpenなコミュニケーションを本社のファイナンス部門の幹部たちとやっていました。
またの機会にこの会社の投資判断と管理をお伝えできればと思いますが、一見おかしいと思われるかもしれない「借入金極大化」というテーマで、単純に資金調達の観点だけではなく、グループ全体の財務管理という観点で考えてみるとおもしろいかと思います。