米国企業と日本企業の資金管理の違い①

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米国企業の資金管理部門はコーポレートファイナンスの考えで行動する

コーポレートファイナンスの考え方からすると、現預金だけでは、想定している企業価値を向上させるだけの利回りを得ることが難しいため、その中でも無駄をなくし徹底的に管理するのが、アメリカの主要企業のTreasury(資金管理)部門の役目なのです。

 

ある時日本企業と設立した合弁会社において、利益配当を日本円で支払う際に、同様のケースがあり、合弁会社の担当の方から相談を受け、送金依頼書の記載方法のアドバイスを差し上げたのですが、某大手銀行の外国為替担当者がその意味を理解できずに、「そんなことは出来ない、外為法に違反する」と言ってきたことがありました。

 

それでも、その銀行の本部の外為責任者に確認してくださいと、繰り返し伝えてもらったところ、「申し訳ありませんでした、ご指定の方法で手続きさせていただきます」との回答がありました。それは、某大手銀行の関西の最大支店で、外為の取り扱いも行内でトップクラスの支店でした。

資金管理において、日米の企業の考え方は、ここまで違っていることをお伝えしたく、本稿を書かせていただきましたが、銀行や証券会社等を、自社ビジネス推進のパートナーとして、協業できるように、知識とスキルの研鑽を積んでいくと、結果的に効率的で、業務品質の高い仕事ができるのではないかと思います。

 

1セントたりとて無駄にせずに、すべて管理下におくことを徹底する米国企業

日本企業の多くが、現預金が多くあることを良いこと、健全なことであり、現預金を減らす取り組みをしないといけないと考えている資金管理の担当者の方は、あまり多くいらっしゃらないと思います。

 

私が勤務した2つの米国企業では、日本法人から米国本社に輸入代金の決済資金や、ロイヤリティなど、いろんな支払を外国送金として、銀行から外国為替取引を経て、支払をしていました。

その2社ともに、日本円で支払う際は、受け取り側で日本円から米ドルへの通貨転換をする必要があります。その際に、何月何日に日本円でいくらを、最適な為替レートを提示する銀行を複数行から事前に見積もりを取って決めておき、その銀行の為替予約番号に基づき、米国本社宛ではなく、その銀行の外国為替デスク宛てに支払うということを行うことがあります。

 

そうすることで、自動的に決定時点での最適レート行使が確約され、ドル転換した後の資金の取り扱いとして、〇〇銀行のどの口座に転換後のドル資金を入金するという依頼さえも銀行に事前に指示をしておきます。要は、1セントたりとて、無駄にせずに、常に、すべて自分たちの管理下におくことを徹底する必要があるのです。

 

なかには、その銀行と直接の決済関係がない場合、別の銀行を経由することもありますが、その中継銀行の手数料を米国本社側である受取人負担にしようものなら、その準備している為替予約が金額不足により実行できず、ペナルティがとられるために大問題となります。それを知らずに日本から発伝さえすればいいと思って処理をしてしまった外国為替に詳しくない担当がいた銀行は、米国本社の指示で取引停止となってしまうこともありました。これは直接受け取り銀行と取引があれば確認の必要すらない事項なので、どこを経由させるかを開示していない際には、実は結構起こっていたことだったように感じています。ですので、一般的な銀行の外為担当者よりは、相当詳しかったんだと思いますが、これも本社の要求にこたえていることが成長機会を提供してくれたんだと感謝しています。

 

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