経営管理に、ITを使いこなす
情報システム部門任せにしない
ITに対して苦手意識をもっているCFO、経理財務部門の方が多くみられます。もちろん、システムエンジニアやプログラマーと呼ばれる、技術的専門家の領域を指しているわけではありませんが、もう少しITを道具として使いこなせるようになる進め方があります。言い換えると、食わず嫌いからの卒業と言えるかと思います。
今や財務・経理、経営企画を含むCFOの傘下の部門においては、ITなくしては業務にならない状態になっています。その自部門の業務の根幹を情報システム部門に任せていてはもったいないと言わざるを得ません。内部統制の中にIT統制があり、全社のセキュリティポリシーは情報システム部門が管理しているとは思いますが、ユーザー部門としての経理財務部門、経営企画部門も積極的に課題提示をして、情報システム部門と深く連携をしながら、効率化、業務品質向上に努めることができると思います。
作業者をアナリストに転換しよう
大きく業務は2つに区分することができます。一つはルーティンワークと呼ばれる定型作業を繰り返し、数多く行う仕事。もう一方は、例外的であったり、その都度考えたり、分析したりする仕事です。
管理会計を行う業務でも、複数の情報をエクセルの一つのワークシートに集計する作業など、規模の大きな会社は言うまでもなく普通の企業でも、結構単純作業に時間を割かざるを得ない状況です。もし、営業や生産、購買、人事などの現場も含めて全社で一度入力したデータが連携して一元化され、集計や転記を一切行うことなく分析に利用できたり、マネジメントに報告用のレポート作成のデータソースに使えるとすると、どんなことが起こるでしょうか?
これまで、集計等の作業に忙殺されて、期限に間に合わせるために十分行えなかった分析作業や、マネジメントへの報告作業に時間を当てることが出来るようになります。つまり、「作業者をアナリストに変える」ことが可能となります。この情報の整理の仕方を変えることは、作業時間を短縮するだけではなく、分析結果・情報品質の向上にもつながる一石二鳥の取組みとなります。
情報が集まる仕組みを作ろう
CFOチームには、売上の情報は営業より後にしか入手できません。在庫情報は、物流部門より後にしか入手できません。生産情報は、製造部門より後にしか入手できません。 全社、全グループのモノ、カネの情報は、そのままの状態でいると、一番最後にCFOチームにもたらされます。
そして、期限までに有益な分析をして、社内のマネジメント・社外のステークホルダーに情報提供することが求められます。 この状況を打破して、必要なタイミングで必要な情報を取るには、二つの領域で取り組むことが必要です。
CFOチームが必要とするIT機能とは
売上金額の単価と数量にわけて、掛け算で売上を求めると低価格でキャンペーンを行い、販売数量、マーケットシェアを取りに行ったのか、競合との比較で製品力が劣っているのか、営業力で負けているのか、価格を下げないと売れない状態なのか、を示すサインが手に入ります。
また、製品別・営業所(地域)別・顧客別・営業マン別とかに区分してみると、事業計画の実現に向けて、何をどうするかの具体策を検討する重要な情報となります。
予算編成時に、各部門、各グループ会社から提案・申請された予算数値を積み上げても、マネジメントの計画に届かないことが多々あります。そあした際には、マネジメントからの指示で売上を伸ばすように変更をする必要があります。その結果、広告宣伝費や営業マンの採用などの費用が増えることもあり、一つだけの情報だと何が反映されて、何がまだで、どの段階の情報でと管理ができなくなり、結果的にあれが入ってなかった・反映されなかったというのが、予実差異分析の段階になって気づくようなことがあります。そこで、複数の部署・子会社・担当者が複数のシナリオや微修正を繰り返す予算編成において、複数バージョンを保持できることは重要です。
また、2020年のコロナウイルス対策のように、当初策定した予算に対して下方修正を行ったり、マーケットニーズの変化や想定外の商品のヒットに対して、事業年度の途中で計画を修正するようなことも起こります。その際にも、複数バージョンのデータ保持ができると、当初予算・下期修正予算等の差異分析を行う対象を複数にして多面的な分析ができるようになります。
経理財務部門が入手・管理する情報は、全社・全部門の情報の一部でしかありません。人件費情報は人事部門、製品原価情報は生産部門等、各部署が自部門の業務の特性で持つ固有の情報があります。たとえば一人当たり売上高という管理をしようとすると、該当する売上高は経理財務部門が持っていますが、該当部署の一定期間の人員数を平均値で算出するとなると、人事部門のデータを割り算に使う必要があります。このような部門横断的な情報を利用して分析や経営管理を行う際に、人手を介してエクセル等の転記を行うと、都度手間がかかることと、転記ミスが生じること、そして分析が必要なタイミングに間に合わないということがあり、他部門の周辺システムとのデータ連携ができることは重要です。
経営目標達成に向けて全社が動くためには、予実対比や経営管理に関する情報を、経理財務部門だけではなく、必要な部署が同じデータを見ることができると、データの受け渡しに紙のレポートを出して配布することや、エクセルに落としてメールで配るようなことをする必要がなくなります。そのまま自身のPCで見れることでスピードが速まるだけではなく、同一情報を見ることで、部門間の認識齟齬をなくす効果も生まれますので、情報の一元化は効率だけではなく、経営品質の向上にも寄与します。
市場や競合が変わることで、自社の競争力を維持・拡大するために、組織変更やM&Aによって組織が追加になったりということも頻繁に行われています。従来の会社コードや組織コードによって、大きく制約を受けるシステム構成やデータ構成ではなく、柔軟に組織変更に対応でき、その変更に際して過去データも変更後の組織に移行できると、組織変更対応後も前年度対比等の分析を継続的に実施することができます。このように組織変更に対応できることも重要な観点であるといえます。