電卓、エクセル作業に留まらない、経営を強くする「管理会計」って何?
経理・財務担当者の仕事は、お金の出入りを計算する「電卓仕事」や予算管理・実績数値の入力といった「エクセル作業」に留まっていてはいけません。
ここでは、担当者が社内で発揮するバリュー・評価を大きく向上する「管理会計」について解説します。
240項目・CFOスキル等級表
「はぁ?」から「へぇ~!」へ
いきなり、なんのことを言っているのかと戸惑われたかもしれません。これは経理・財務部門の仕事に対する社長やマネジメント層の反応変化をさしたものです。皆様も日々の仕事の中で以下のように感じられていることはありませんか?
・大量の伝票や処理手続きを、間違わずに、期限通りできて当たり前
・感謝されたり、信頼されるなんて、どこの世界の話???
でも、ちょっと考え方や、仕事のやり方を変えてみると、結構簡単に「はぁ?」という社長やマネジメントの反応を、「へぇ~!なるほど、ありがとう!」に変えることができるのです。
管理会計に「ルールは無い」
財務会計は、決算を正しく締めて、大企業であれば会計監査をパスしたり、法人税の申告を税務署に指摘をされないように行ったりと、ルールに従って、仕事を進める必要があります。
でも、管理会計に、「ルールは無い」んです!
もちろん、いろんな学者の方々や、公認会計士の方たちが、こんな分析方法があるとか、売上高営業利益率はこのように計算するとかを、本に書かれたり、セミナーで話されたりと、みなさんもこういう情報で勉強されたこともあるかと思います。
では、ちょっとここで、質問です。
建設業と家電量販店は、同じ、分析方法で、経営管理をしているのでしょうか?
同じ家電量販店でも、開店して長い期間好調な売上、利益を計上しているお店と、新しい地域に進出して、開店直後のお店とでは、同じ分析方法で、経営管理をしているのでしょうか?
業種が違ったり、同業種でもマネジメントの経営方針が違ったり、同じ会社でも、既存店舗と新規出店した店舗では、それぞれの業績を見る方法、分析指標は違っていて当然なのです。
ということは、いつでも、どこでも、必ず通用する、学校の教科書に書かれて、テストで正解をもらえる「管理会計」というものはないのです。
管理会計において必要なこととは?
夜間飛行をするパイロットと同じことが求められる
では、何が必要でしょうか?
飛行機のパイロットが、夜間飛行をする場合を想像してみてください。
離陸する空港の周辺は、電灯もあり、目で前を見ながら滑走路に進むこともできるかと思いますが、離陸後は、真っ暗な中を、目的地まで飛行する必要があります。
最近は、プログラム化されていて、自動操縦の機能もありますが、気流の悪いところの航行など、自動操縦のままでいいかどうかの判断もしているそうです。
でも、真っ暗な高度約1万メートルの上空でパイロットは、どんな情報を見て、知って、操縦しているのでしょうか?
フライトの前に、目的地の気象状況、目的地までの経路の気象情報などから、フライトスケジュールを作成します。燃料の搭載状況や、機体の異常等のスタート時点のチェックも必要です。
そして、離陸して航行するのですが、事前に作成したフライトスケジュールには、どの地点を何時何分に通過するかなど、とても詳細に作成されたフライトスケジュールと、実際の運航状況を比較しながら、また、残りの区間の気象情報を地上や、先行している飛行機から送られる情報を受けて、安全に、遅れないように確認、調整しながら操縦しています。
多少の正確性や整合性がなくても「作ってみる・やってみること」が重要
企業経営もこのパイロットの動きと同じような進め方が求められます。
実は事業年度開始時までに、作成された予算は、この飛行機のフライトスケジュールと同じ目的を持っているのです。顧客の動向や、競合企業の動きを分析、予想して、自社の営業活動方針、新製品の市場投入時期や販促プラン、価格設定等の事業上の取り組みをどうすべきかを考えます。それを全社の購買、生産、物流、製品開発等の各部門の活動と整合性をもたせたビジネスシナリオを作成します。
最初から正確なものを作る必要はありません。
まず、多少の正確性や整合性がなくても、作ってみる、やってみることが、とても重要だと感じます。
そうすることで、「もう少しここを細かく見てみよう」だとか「この売上を実現するには仕入や生産計画を反映させよう」というように、どんどんレベルアップしていきますので、まずやってみることをお勧めします。
ビジネスシナリオをベースにして予算編成をしよう
このようにビジネスシナリオをベースにして編成された予算には、誰(どの部門)が、いつ、何をするというシナリオが予算数値とセットになっていますから、予算と実績を比較して認識した数値の差異(予実差異)には、単に数値の増減だけではない、自社にとって有益なメッセージとして理解できます。
このように作成した予算だから、この数値が、こうなっているということは、こういう営業活動をするべきだと予実分析をした報告の際に説明を付け加えることで、「はぁ?」から「へぇ~!」へと、社長、マネジメントからの反応を変えることができる情報発信が可能となります。
これまでは、過去実績の分析という細かな確認をされていたかもしれませんが、このやり方だとどこが重要かに気づくこともできるので、限られた時間を有効に活用して、全社の業績に大きな影響がある部分から仕事を進めることができ、どうでもいい細かな部分は後回し、もしくはやらなくてもいいと、メリハリのついた仕事の仕方にシフトできるようになると思います。
ビジネスシナリオの作り方や、予算編成の仕方については、もう少し詳しく別の機会にご紹介していければと思っておりますので、よろしければそちらもご覧ください。